Googleアナリティクスのコホート分析でユーザー行動のヒントを見つける
公開日: 2016.01.18
最終更新日: 2023.07.04
2015年にベータ版としてリリースされたGoogleアナリティクスのコホート分析。今まで、アドバンスセグメントでセグメント(=コホート)を作成して、そのセグメントの行動の変化やトレンドなどを分析していた方にとっては、より簡単にコホート分析ができるようになったのではないでしょうか。
ここではGoogleアナリティクスのコホート分析の基本情報と具体的な事例を交えて解説していきます。この記事を読めばコホート分析を利用して新たなヒントを見つける事ができます。
1.コホート分析とは?
コホート分析とは、セグメントされたユーザー(集団)が時間の経過とともにどのように行動が変化していったかを分析する手法です。元々、時系列を軸に将来の人口分布がどのように変化するかを分析するために使われています。
Googleアナリティクスでは、例えば、1月10日にサイトに新規訪問したユーザーが、その後、再訪してくれているか、どの程度の間隔で来てくれているか(どの程度減っているのか)、などを把握できるツールです。前段で記載したとおり、Googleアナリティクスのコホート分析が出てくるまでは、アドバンスセグメントが活用されていました。アドバンスセグメントを使用する場合、セグメントを設定した後、月別や日別などの期間を都度指定して数値を把握していました。かなり手間のかかる方法なので、アドバンスセグメントを使用したコホート分析をしている方は多くなかったのではないでしょうか。
Googleアナリティクスでコホート分析β版が出た事で手間が軽減され、より身近なものになったと言えます。特に最近ではスタートアップのサービスリリース時から成長・安定軌道に乗るまでの中で高速PDCAを回すための一つの手法としてコホート分析が頻繁に利用されるようになってきている流れもあるようです。
もちろんスタートアップだけではなく、様々な企業で活用が拡がってくると思います。
1-1.ECサイトの場合
例えば、1月10日から31日の期間に新規会員キャンペーンを実施した場合を想定します。この期間にサイトに初めて訪問したユーザーがその後、
・どの程度再訪してくれているか
・初回訪問から何日目で会員になったか
・日別で見た時にページビューに違いはあるか
などが視覚的に理解できます。
1-2.コンテンツマーケティングを実施しているオウンドメディア
魅力的な記事とSEOに優れたコンテンツマーケティングを実施しているオウンドメディアでは、ページビューや再訪率、滞在時間などを向上させていく事でサイトの価値が上がります。
そこで、このようなメディアの場合、
・訪問ユーザーのページビューの推移
・訪問ユーザーの滞在時間の推移
・訪問ユーザーの再訪率の推移
などが簡単に把握できます。今までは日々のページビューや新規・リピーター数、滞在時間などの推移のみを見ていた場合、特定の日に来訪したユーザーのこれら指標の推移を簡単に見ることができるので新たな視点が見つかるかもしれません。まずはこのようなコホート分析の基本指標だけでもユーザーの行動特性を掴む事ができます。
この他、下記のような事も把握できます。
・特集ページを公開し、その後のユーザー行動を把握したい
・既存ページをリニューアルし、その後のユーザー行動を把握したい
上図の場合、2015/12/14から12/20まででそれぞれの日に来訪したユーザーがその後7日間まででどの程度再訪しているかを表現している図になります。Googleアナリティクスのコホート分析では、セグメントされたユーザー別に行動変化を見ていくと前述しました。現状のGoogleアナリティクスのコホート分析β版では、セグメントは、上図のように日別のみでしかみれません。日別の来訪ユーザーをグループとして、そのグループの行動特性を掴むのがGoogleアナリティクスのコホート分析です。
ここまででコホート分析のイメージが掴めたと思います。次にGoogleアナリティクスのコホート分析の基本的な見かたを解説していきます。
2.Googleアナリティクスのコホート分析の使い方
左側のメニュー「ユーザー」の中に、「コホート分析ベータ版」があります。ここをクリックして表示させると、下記のような画面が表示されます。
表組みの中で、一番左側の列(赤枠)が過去7日間(キャプチャを作った日が12/21です)に初めて訪問したユーザー数になります。この列のすぐ右側の「第0日」の列(緑枠)は、一番左側の日にちのユーザー数の割合です。「第0日」とは初回訪問日なので100%になっています。(アドバンスセグメントを併用している場合は100%でない数値になる事もあります)
更に1つ右隣の列は「第1日」で、「次の日」という事になります。(別の日にキャプチャしております。)
上の図では緑色の枠の箇所になります。例えば、上図の場合、2015/12/11に訪問したユーザーは赤枠の箇所で155,955人、第1日と掛け合わせたセルには「4.06%」と記載されています。つまり、155,955人の4.06%で、実際のユーザー数は6,331人という事になります。この4.06%という数値は、この場合「ユーザー維持率」という指標になります。つまり、ユーザーの定着率、再訪率という認識で良いと思います。この行を右にずらして見ていくと、残念なことに第7日には既に0%となっています。ユーザーを維持していくというのはどれ程重要で大変なことかを実感できます。
次に、指標にフォーカスをあてて解説していきます。
先ほどの画面の上を見ると、下記のようなプルダウンがあります。赤枠の箇所が指標になります。
指標付近にフォーカスしたキャプチャ
先ほど見た「ユーザー維持率」はデフォルトで選択されています。その他の指標はこのプルダウンの中にあり、下記のようなものがあります。全部で3つ(「ユーザー」「合計」「定着率」)にカテゴライズされています。
定着率
・ユーザー維持率
→これが、再訪率と同義として捉えて良いものとなります。
ユーザー
この指標はユーザーあたりの指標を見る時に使用します。
ただし、このカテゴライズにある指標の「ユーザーあたりの◯◯」には注意が必要です。例えば、上記のキャプチャで2015/12/02のユーザーは「155,955人」。次の日のユーザー維持率は、4.06%。つまり第1日は6,331人のユーザーが再訪していた事は前述しました。この事を踏まえて指標を「ユーザーあたりのページビュー」を選択してみると、0.28となっています。ユーザー1人あたり1ページも見ていないという事になってしまいます。
これは、第1日のページビュー数を2015/12/02の155,955人で割っている事が原因です。第1日の総ページビュー数は別の指標「合計>ページビュー数」で43,714と表示されます。この43,714÷155,955という計算が行われているという事になります。本来は、(ページビュー数)43,714÷(第1日のユーザー数)6,331=6.90PVになります。という事で、「ユーザーあたりの◯◯」という指標は少し注意が必要です。という事で、ユーザーあたりの○○という各指標には下記が用意されています。
・ユーザーあたりのセッション
・ユーザーあたりのセッション継続時間
・ユーザーあたりのトランザクション
・ユーザーあたりのページビュー
・ユーザーあたりの収益
・ユーザーあたりの目標の完了数
合計
合計はユーザーあたりとは対照的に指標の合計を元に計算されています。
・セッション
・セッション時間
・トランザクション数
・ページビュー数
・ユーザー数
・収益
・目標の完了数
以上、これらの指標については、前述した通り、現時点でユーザーあたりの○○は正確な数値ではないので、現時点では、定着率と合計の各種指標を見て大きな流れを掴むという使い方にしておいた方が良いかもしれません。
次に、その他のプルダウンも見ていきます。
コホートの種類
ベータ版では、「ユーザーを獲得した日付」しか選択できません。ここは今後拡張されていくと思います。「ユーザーを獲得した日付」とは、「最初のセッションを開始した日時に基づいてグループ化されています。」とGoogleヘルプ(英語版)で説明があり、新規ユーザーとしてサイトに最初に接した日付でグループ化されているという事になります。
コホートのサイズ
日別、週別、月別の3種類があります。どの期間でユーザー群を見ていくかによって選択します。
期間
コホートのサイズで選択したものによって、この期間の選択内容が変わります。コホートのサイズ次第で、それぞれ下記が選択できます。
日別を選択した場合、過去7日、過去14日、過去21日、過去30日
週別を選択した場合、先週、過去3週、過去6週、過去9週、過去12週
月別を選択した場合、先月、過去2か月、過去3か月
今までで解説してきた内容はコホート分析ベータ版の基本な使用方法の解説でした。
次からは、コホート分析の”見かた”について解説していきます。特段、新たな手法や複雑な手法ではなく、Googleアナリティクスの基本的な分析手法をコホート分析に当てはめてみていくという内容になります。
3.コホート分析事例
前述したオウンドメディアのサイトの例で、下記のような分析もできますと書きましたが、そのコホート分析の具体的な見かたを解説していきます。
オウンドメディアのコホート分析例
・特集ページを公開し、その後のユーザー行動を把握したい
・既存ページをリニューアルし、その後のユーザー行動を把握したい
上記の「特集ページを公開し、その後のユーザー行動を把握したい」ついて解説していきます。
特集ページの公開日を12月4日、メルマガ配信を12月5日に実施した事例で、公開前後の期間を見ていきます。
コホートの種類:ユーザーを獲得した日付
コホートのサイズ:日別
指標:ユーザー維持率
期間:過去30日
「2015/11/24 – 2015/12/03」
「2015/12/07 – 2015/12/16」の期間で比較しています。
「2015/11/24- 2015/12/03」の期間では、12/01のユーザーが一番維持率が良くなっています。9日後にも約10%の来訪がありますが、第4日(メルマガを出した12/5に当たる日)も約20%と多くのユーザーに再訪させるきっかけを生んでいた事と言えます。
また、第11日の維持率も高めになっています。これは12/05のメルマガ配信が要因ではないかもしれませんが、この要因を追究する時は、この日のユーザーがどのチャネルから来て、どのページに着地していたかを見ていく事で要因が掴める場合があります。その要因を次の施策に展開するのも1つのアクションプランになります。
次に、「2015/12/07 – 2015/12/16」の期間で見ていきます。「2015/12/13」の期間では、第4日まで約50%の維持率があります。かなり高い数値と言えそうです。この日に何か施策を打ったかどうかを確認する事はもちろんですが、テレビや雑誌、ニュースサイトに掲載など外部要因が影響している事も考えられます。
また、特集ページ公開後では、第5日や第6日などでも維持率が15%近くある事も、特集ページがユーザーの維持率に貢献している1つの要因として評価する事もできるかもしれません。
このように日別のユーザー行動を見るだけでも数値の変化は起こっている事が分かります。そして、それが何によって引き起こされたかを追究していく事で施策の評価や影響度の強さなどを測る事ができます。
まとめ
簡単ですが、コホート分析を解説しました。コホート分析だけでは課題が明確になるまでに至らない事が少なくありません。あくまでも課題を見つけるためのきっかけと捉えます。特に、短期間で実施するキャンペーンのユーザー行動変容を見たい場合や定期的に更新されるコンテンツをユーザーに提供しているサイトの場合、コホート分析が短時間かつ簡易的に行動特性を掴めるツールとなり得ます。まずは、特定のキャンペーンや特定の期間のコホートの基本指標を見て、課題発見のきっかけが見つかる事ができれば、次に比較対象となるコホートを持ち込んで分析するとよりユーザーへの理解が深まります。
機能が拡張されれば更に有効活用が拡がります。当社でも適宜このブログで情報発信していきたいと思います。